夜な夜な黒魔術屋

感想・エッセイ・小説・シナリオ

『苦行』

(注:未完結) 登場人物 神田 啓(かんだ はじめ) 主人公。K大演劇部部長兼脚本ライター、古典文芸に造詣が深い故に意識が高いとよく皮肉られるが、本人は「あくまでエンタメ志向の書き手なのでとても困っている」とのこと。後輩の面倒見がよく、部員から…

『帰郷』

故郷の梨湘(りそう)に十年ぶりに帰省したのは、お母さんと自分の帰化手続きを済ませるためだった。故郷を離れるために帰郷するという奇妙な体験を、生まれて初めてするのだった。役所の窓口で国籍離脱の書類を提出してから証明書を受け取るまでたったの数…

私なりの『魔女こいにっき』の楽しみ方 その壱

諸君はどんな思いでこの作品を手に取ったか私には知る術がない。新島氏のファンだからかもしれないし、単純に口コミで興味を持ったからかもしれないし、店頭で偶然出会って一目惚れしたなのかもしれない。まあ、いずれにせよどこかしら魅力的に思えるところ…

『もののあはれは彩の頃。』感想

きっかけはこの前『もののあはれは彩の頃。』の聖地巡礼の話を持ち掛けられたことだろうか。いやまあ、話を持ち掛けられたというよりは厚かましくグイグイと食いついたと言った方が正確かもしれないが、ともあれ、約三年ぶりに本作を収納ケースから掘り起こ…

『怨念石』

私が地質学のフィールド調査でベトナム南部にあるダクノン省のとある村を訪れたのは、ちょうど怨念石を崇め奉る毎年恒例の儀式が行われようとしている頃だった。言い伝えによると、あれはベトナム戦争中にアメリカ兵に殺された妊婦の血に染まった呪いの石だ…

『夏夢夜話』のすゝめ

一般向けの世界しか知らなかった頃の自分にとって、ノベルゲームといえばKIDだった。唯心論の軸に埋め込んだ頽廃的な世界観と淡々とした語り口を武器に、どこまでも郷愁を誘う諦念が漂うような、現実と幻想を自由に往来する正反対の性格を兼ね備えた独特なメ…

『火箭 ゆるすまぢ』感想

ロープラで、如何にも地雷臭いタイトルだけど、思いの他かなり濃厚な内容だったので感想を綴ることにした。 恋は古より歌に詠まれし壮大なテーマ。そして同じくらい長らく古今東西の文豪たちが重宝してきた、男女関係にまつわるもう一つのテーマといえば、そ…

『サルテ』感想

良く出来た古典的な物語に華麗なギミックを詰め込んだソワレのデビュー作。ある人物の一生を「劇」として振り返る形で派手に物語を進行させるという、エロゲ業界では中々見られない大胆な手法が使われた一作である。悲劇的な笑いを誘ういわゆる不条理劇を扱…

『きまぐれテンプテーション』感想

シルキーズプラスのロープラ新作。意外とコスパが高かったのと、感想を読んでみたいって言われたので記事にしてみた。 こんな短い導入でいいのか……? 以下は長文感想。(ネタバレあり、ただし未クリアの人でも読めるように配慮する) ゲーム性 テキストをしっ…

『White Blue』感想

Blueシリーズの新作で、Lilim20周年記念作『White Blue』。周年記念作だけあって、勝利ルートと敗北ルートがそれぞれ用意されており、複数の男性による一人(二人)の女性の奪い合いという構図から、サブヒロインの役割まで実に大変「Blue」らしい物語に仕上が…

『鎖-クサリ-』感想

2005年より前に発売されたエロゲの中で一番プレイしてほしいなと個人的に思うのはこの『鎖-クサリ-』。かなり古い作品で、今更感が否めないが、それだけ思い入れがある作品なので何か残したいという気持ちに駆り立てられて本記事を書いてしまった。ひたすら…

古文と物語

髪はゆふゆふと肩の程に帯びて、かたちもすぐれ、たのみしき様なるを、其れよと見るに、きと胸がつぶれて、いと口惜しく見たてる程に、此の子の我が方を見おこせて、「いざなん、聖のある、おそろしきに」とて内へ入りにけり。 ーー『発心集』 受験生だった…

私が夜の京都の繁華街を好きになった理由

京都といえば、静寂で優雅な古都。繁華街という現代人の「堕落」の象徴は、この町には不相応に思われるかもしれない(いや、きっと不相応に違いないであろう)。しかし、私は京都においてもとりわけ夜の繁華街が好きだ。 堕落とは、すなわち人間の天性である。…